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「新宿に原発を」作らなくてよかった。しかし、日本に原発を作らなければよかった。 [脱原発問題]

(1) 30年前、「新宿に原発を」という運動があった。広瀬隆氏は、「東京に原発を」という本を1981年に出版している。

 新宿新都心そばの、ガスタンクのあるあたりに、ガスタンクは、都会にあるのは危険だから撤去して、代わりに「絶対安全な」原発を誘致してはどうか。絶対安全なんだから新宿でも福島で一緒じゃないか、というものである。また、原発はその程度の広さの敷地で十分に建設することができる。

(2) この「新宿に原発を」という運動に対しては、「新宿に原発を作ることに反対」という運動まで現れた。「新宿に原発を」などという運動をして、万が一、政府がそれを逆手に取って、「新宿に原発を」作られたら取り返しがつかない、という観点から、「新宿に原発を」という逆説の署名活動を行っている横で、「新宿に原発を作らせるな」という署名活動が現れた。

 「新宿に原発を」という逆説の運動は、逆説なのに、逆説だとは表向きは言わず、市民の反発を買うとともに、「もし、本当にできたらどうするんだ、絶対に阻止する」という運動を行う手間で市民運動のエネルギーがそがれた、という意味で、「新宿に原発を」という運動は間違っていると、当時から考えてきたが、言うまでもなく、今回の福島原発事故で、「新宿に原発を」作らなくてよかった、ということが明らかになった。

(3) 確かに、もんじゅ行政訴訟の高裁判決(平成15年1月27日名古屋高裁金沢支部判決・平成17年5月30日最高裁判決により破棄)でも認められているように、つまり、ひとたび原発事故が起これば、遠く熊本県にまで被害が及ぶ、として、熊本県在住者の原告適格を認めているように、新宿に作ろうが福島に作ろうが、原発事故が起こった場合に首都圏も壊滅的被害を被ることがある。

(4) しかし、まさに今回の福島原発事故がそうだったように、壊滅的被害を被るのが原発周辺数十キロにとどまる場合も多々あるのだから、万が一の事故に備えて、新宿ではなく、福島に作ったのは、正解ではないが、最悪の答ではなかったことが明らかになった。

 「新宿に原発を」作らなくてよかった。だけれども、万が一、ということがあるのだから、日本中どこでも、原発を作ってはいけない、ということに思いを致すべきだった。日本に、原発を作らなければよかった。