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慰安婦問題の日韓合意で、最終的かつ不可逆的解決になったとは考えられない。 [戦後民主主義問題]

(1) 日韓両政府は12月28日、いわゆる慰安婦問題について、合意に達したと発表した。

 日本側は元慰安婦に対して「心からのおわび」を表明。また、元慰安婦を支援する事業に対し10億円規模の資金を拠出することを約束した。岸田文雄外相は、この資金拠出について、賠償ではなく、元慰安婦の尊厳回復のための事業だと説明している。

 そして、両国は、今回の合意は「最終的かつ不可逆的」なものになると発表している。

(2) しかし、その後、当事者の元慰安婦の女性らがこの合意に反発し、日本政府は正面から法的責任を認めて謝罪すべきだ、と主張しているとのことで、これを受けて韓国世論も、6割程度の国民は今回の合意に反対している。

 また、ソウルの日本大使館前の慰安婦像については、日本側は撤去が今回の合意の条件だ、と発表しているのに対して、韓国側は、最終的には民間団体が設置しているので責任は持てないと表明している。

(3) 今回の合意で、最終的にこの問題が解決したとは到底、思えない。両国政府がどんなに合意したとしても、民間が合意に異議を申し入れている限り、紛争は終わらないのは当然だからである。

 しかも、2015年12月にも、日韓条約による、すべての、それまでの個人の賠償請求権が消滅したということが憲法違反であると主張した訴訟の、憲法判断に踏み込まない韓国最高裁の判決があったが、その問題についての韓国における司法的解決はまだまだ付いたわけではない。

(4) 韓国は、大統領が代わったあと、前大統領の行為が徹底的に否定されることがある国である。次の大統領とその意を受けた韓国最高裁が、韓国民の人気取り政策で、行政機関がどんなに元慰安婦の権利が無いと決めても、憲法上、彼らの権利は失われないという判決を下せば、いくらでも今回の日韓合意は覆されてしまう。

 今回の合意は、少なくとも韓国最高裁による、元慰安婦の日本政府に対する請求権は消滅している旨の判決を待つべきだった。今回の合意は両政府が功を焦った、拙速なものだった。最終的かつ不可逆的解決があったとは、到底、考えられないところである。