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従軍慰安婦は、当時も今も、極めて重大な人権蹂躙行為である。橋下代表が安易に「必要だった」などというのは言語道断である。 [戦後民主主義問題]

(1) 橋下・維新共同代表が、一連の「慰安婦問題」の発言について、5月27日、外国人特派員協会で会見を行った。橋下氏は、在沖縄アメリカ軍に風俗業の利用を勧めた点のみ、アメリカ人とアメリカ軍に対して謝罪したが、その他の点については「誤報」である、自らの発言を正当に報道しなかった世界の報道機関が悪いとして、自らは誰に対しても、謝罪も訂正もしなかった。

(2) しかし、橋下代表の一連の発言と今回の見解は極めて不当である。そもそも、橋下代表は、慰安婦は、当時は必要なものだったが、今の自分はこれを許せないものだったと考えているから、慰安婦問題について不当な考えを持っていないと主張しているが、現在の米軍に対して、沖縄での強姦事件を防ぐために、風俗業を利用してはどうかと米軍司令官に勧めたと自ら認めているではないか。 

 強姦を防ぐために売春を利用すべき、との考えは、「慰安婦利用」と共通するものがある。橋下氏は米軍に勧めた「風俗業」が、売買春を指すものではないなどと強弁しているが、ボーリングやカラオケでは銃弾飛び交う中を生きて帰った米兵の心は安まらないので強姦に走る恐れがある、という文脈の中での発言なのである。性交に至らない女性との交わりでは米兵を欲求不満状態で帰すことになり、却って強姦事件などを引き起こすではないか。橋下氏が米軍に勧めた「風俗業の利用」が売買春を指していないのなら、一体、どんなものを想定していたというのだろうか。橋下氏の米軍と「風俗業」の釈明は、詭弁も甚だしいというべきである。

(3) そもそも、橋下氏が、従軍慰安婦は、当時は必要だったと安易に言うこと自体、間違っている。従軍慰安婦は兵士による強姦を防ぐ、被害の小さい代替手段などでは決してない。強姦に勝るとも劣らない、極めて重大な女性に対する人権蹂躙行為である。兵士による強姦は、軍や政府としても防ぎ切れないもので、「やむを得ない」という面もあるところ、従軍慰安婦はまさに政府の意思によってことさらに行ったものであり、政府による組織的「故意犯」であるという面において、客観的悪質性はむしろ大きいという見方もできるくらいである。

 それを、当時は必要だった、などというのは、当時の見方であれ今の見方であれ、従軍慰安婦問題の人権蹂躙の重大性を無視する、政治家としてあるまじき発言である。

(4) また、橋下氏が重要視する、「軍による慰安婦に対する直接の強制連行のような行為」があったのか、なかったのか、という点も、極めて矮小な論点であるということを指摘しておきたい。

 誰が好き好んで、一つ間違えば銃弾を浴びて死んでしまう戦地に、連日、兵士たちの慰み者になるために、従軍慰安婦などになる者がいようか。仮に軍による強制連行のようなことは無かったのだとしても、軍から慰安婦調達の依頼を受けた業者が、貧困ゆえに慰安婦になるしかないような女性を慰安婦に引きずりこんだのであるから、その「人権蹂躙」の度合いは、強制連行があってもなかっても、取り立てて言うほどの違いはないと考える。

 あるいは、慰安婦調達の業者が、女性をだまして慰安婦にしたような事実はあったと認められている。また、女性の親に大金を渡し、嫌がる娘を親は無理矢理慰安婦にした、などという事実はあったと認められている。これらの女性ないしはその親は極めて貧困な状態で、娘を売らなければ食べていけないような、あるいは、娘を売らなければ一定レベルの生活を維持できないような、そんな状態を利用して、あるいは、結果として利用して慰安婦が集められ、慰安婦となった女性にとっては、銃剣や刑罰の威迫のもとで連行されるのも、貧困故に慰安婦にならざるを得なかった事態も、特に違いはないというべきである。

 さらに言えば、当時、慰安婦になるような朝鮮人女性が非常に貧しかったのは、日本政府の植民地政策も大きな原因だった場合も多々あるのである。

(5) 橋下氏はまず、これらの事実をよく認識した上で、徹底的に当時の慰安婦政策を日本人として深く反省し、真摯に被害者に謝罪すべきである。その上で、その後で、私たちはこれだけ真摯に反省し、深く謝罪しているが、慰安婦のような人権蹂躙行為を行っていたのは日本だけか、一緒に反省しよう、と世界に呼びかける資格が生じるというべきである。

 今の橋下氏は、歴史の現実を歪曲し、被害女性の人権を顧みず、今、まさに心なき発言により、新たな人権蹂躙を行っているもので、決して許されない行為であると考える。