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現在マイナスの物価上昇率を、「日銀が早期に2%にする」などというのは、物価の安定を害す、日銀法違反行為であるが、害悪はそれにとどまらない。 [アベノミクス批判]

(1) 安倍内閣の恫喝ともいえる強い要請を受けて、日銀は1月22日、「物価安定の目標を2%とする。金融緩和を進め、できるだけ早く早期実現を目指す。」などとする、政府との共同声明を発表した。

(2) しかし、現在、物価は下落している。マイナス0.5%だとすると、早期に物価上昇率2%を実現すると、早期に2.5%程度、物価が上がることになる。

日銀法は、

第二条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

とその理念を定めている。早期に2.5%、物価を上げるのは「物価の安定」でないことは明らかである。今回の政府と日銀の共同声明は、日銀法違反の違法行為である。

(3) この点をごまかすため、共同声明でも「物価安定の目標を2%とする」としているが、たとえば、今なら、物価上昇率が1%を越えると、物価下落策を取るところ、将来、物価上昇率が2%になっても、物価は安定していると考え、それまでは物価下落策は取らない。ということなら、「物価安定の目標2%」は辛うじて「物価安定」を害するものとはならない。

 しかし、早期に2.5%、物価を上げる行為は、物価安定を害するものであり、日銀法違反の違法行為であって、決して許されないものである。

(4) 年金生活者を始め、生活保護受給者、また、給料が上がり始めるのは数年後とされているから多くの給与生活者にとっても、早期の2.5%の物価上昇は、まさに「消費税の2.5%上げ」と同様に、これまでの資金で買えるものが約97.5%に減ってしまう、生活を、約97.5%に切り詰めなければならない「被害」が生じる事態となるものである。

 また、消費税増税なら貯金の価値は減らないが、2.5%の物価上昇は、貯金の価値まで約97.5%に減らしてしまうものである。

(5) さらには、2%の物価上昇を、物価安定ととらえ、無期限で金融緩和を行うというのだから向こう5年間、2%の物価上昇が続くこともある。そうするとすると、合計10%の物価上昇になり、生活を10%、切り詰める必要が生じる。

(6) 経済を活性化した結果、物価が上がる、というなら、それは、政府や日銀がコントロールできないことだからやむを得ない、ということだろう。しかし、わざわざ、ことさらに、物価を上げる、などという政策を、しかも、短期に2.5%でも上げて、合計10%でも上げる、などというのは、日銀法違反の違法行為であるとともに、いくらでもただ同然に紙幣を発行できて、物価をコントロールすることが可能な日本銀行の横暴であり、国民は、体を張ってでも対抗しなければならないほどの暴挙であると考える。 

(7) また、前記の論述は、日銀がそのような、違法、不当な目的を定めたことへの批判であるが、そもそも、少々のことをしても、2%の物価上昇など実現できないのだから、実現できないことをやると宣言するのは、日銀の信用を失墜させる、という問題もある。佐藤健裕、木内登英の両日銀審議委員は、その理由で今回の共同声明に反対した。

 しかし、日銀の信用失墜にとどまらない可能性まである。つまり、何としても2%の物価上昇を実現するため、見境のない資金提供が行われれば、その弊害は、円の暴落などにつながりかねない。

(8) 結局、日銀は、物価を短期間に2.5%も上げるという、物価安定に反する、日銀法違反の暴挙を行おうとしている上に、それは尋常な方法では実現が難しいのであるから、たとえば、現在予定している債券等の買い入れ資金・毎月13兆円を、倍増させる等、将来の超インフレを招かないようにと、慎重に考えられた数量をはるかに超えた資金を用いてでも、目標を実現させなければならない、ということにもなるのだから、その害悪たるや、ハイパーインフレや円の暴落等、とてつもなく大きいものがあると危惧されるものである。

 ただちに日銀は、今回の決定を撤回すべきである。