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JR福知山線脱線事故での前社長の無罪主張、遺族も冷静に裁判の行方を見守ってほしい。 [刑事裁判問題]

(1) JR福知山線脱線事故について、業務上過失致死罪で起訴された裁判で、山崎前社長は無罪を主張した。

(2) この裁判は極めて難しい裁判である。事故当時の、安全対策の最高責任者の刑事責任が問われているのであるが、後付けの理由ではなく、当時、この事故が起こる前に、この場所にどのような安全装置を設置しておく義務があったのか、また、それを怠ったことが刑事責任を問われる程度のものなのか、ということが厳格に判断されなければならない。

(3) そもそもこの事件は、運転士が制限時速を大幅にオーバーして起こった事故につき、刑事責任が問われているのであるが、同じように制限時速をオーバーした場合に事故が起こるような場所はなかったのか。

 そこにATS(自動列車停止装置)が設置されていないことが、重大な過失で、たまたま結果が発生していないだけのことなのか。

(4) あるいは、日本中の鉄道で、本件事故と同じような速度オーバーがあったら脱線するような箇所は、財政を逼迫させようが大赤字であろうが、直ちにATSを設置し、それまでは鉄道の運用を停止するのか。

 そんなことは事前には誰も求めずに、結果が起こった鉄道の責任者だけ、刑事責任を問おうというのか。

(5) この裁判にはこのような極めて難しい論点が多々ある。速度オーバーでこのカーブに進入した運転士の責任は極めて重大で、その使用者であり、何といっても結果として事故を防げなかったJRの責任は極めて重大である。しかし、それと、個々の担当者の刑事責任が問われる、ということとは全く違う。

(6) 前社長が刑事責任を認めないのはけしからん、などという、あまり法律的でない被害者感情の報道は不適切である。

 この裁判は、純粋に刑事責任の有無が問われるべきものである。遺族も冷静に裁判の行方を見守ってほしい。


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コメント 2

通りすがり

全く賛成です。
この件にかかわらず、民放の報道の多くには問題がかなりあると思います。
「この人達かわいそうやん、何とかならへんのか!」と騒ぎ立てる。この手の意見が一番国民の受けが良いですから。視聴率稼げますもんね。ここで、「この人達かわいそうやから全員助けましょう!みなさん増税になっても良いですよね!」とは言わない。無責任の限りです。まあ…不景気でスポンサーも減ってるみたいですから、民放も必死なんでしょうが、その害悪はかなりの影響があると思ってます。
今回の件では、山崎前社長が個人として刑事罰に相当するとはとても思えませんが、裁判官が常識的な判断をしてくれる事を望みます。裁判員裁判にならなくて良かった…




by 通りすがり (2010-12-23 02:59) 

kentaro

 通りすがりさん、コメントありがとうございました。

 この件は裁判員裁判ではないわけですが、裁判員裁判になる事件も多々あるわけですから、報道は、いろんな意味で、正確にしてもらわなくては困りますね。

 ありがとうございました。
by kentaro (2010-12-24 17:44) 

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