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除斥期間経過後の賠償を認めた最高裁判決は不当である。除斥期間を延長する法改正をすべきである。 [法律]

(1) 最高裁は、4月28日、26年前の殺人事件について、除斥期間を適用せず、加害者の賠償責任を認める判決を下した。

 最高裁は、死亡を知り得ない状況をことさらに作り出した加害者が賠償責任を免れるのは著しく正義、公正の理念に反するとして除斥期間を適用しなかったのであるが、不当である。

(2) 殺人事件で死体を埋めるなどして20年以上発覚しなかった事件は、これまでに多数、存在したものと思われる。

 また、最高裁は、「死亡を知り得ない状況をことさらに作り出した加害者」というが、殺人後、巧妙に逃げる等で犯人が判らなかった場合でも、被害者において賠償請求等の権利行使ができないという意味においては特に違いは無いように思われる。

(3)かつて最高裁は、予防接種訴訟における国の責任を認める際に、除斥期間の適用を排除したことがある。

 しかし、これは、本来、国民の福祉を増進させ、健康被害者に対してはその原因を速やかに解明し、その後、万全の救済措置を講じる責務を有する国が、自らの不法行為について、自ら定めた20年という除斥期間という制度により、現に苦しむ被害者への賠償義務を免れるのは、著しく正義、公平の理念に反するとするもので、国民の健康被害の救済について積極的責務を有する国が、長年放置してきたことにつき、その放置期間が長ければ長いほど、より強く非難されるべきところ、20年の経過により、責任が免除されるというのは余りにも正義、公平の理念に反するとしたものである。

(4)しかし、除斥期間の趣旨は、不法行為が有ろうが無かろうが、被害者からの権利行使ができようができまいが、なにせ、 20年という時の経過により、事件そのものが風化し、証拠も散逸し、もはや不法行為による賠償手続を法的に認めることが不相当だとされるからである。

 その期間を法律で20年と定めている以上、予防接種事件における国の責任等、極めて例外的なものを除いて、除斥期間の規定は守られるべきである。

(5)一方、現代は科学の進歩により、古い事件でも科学的に完全に立証する技術も発達したし、インターネットを含む各種メディアの発達により、20年やそこらの記録は国民にとっても簡単に扱える。また節目節目でメディアが思い出させてくれるから記憶も余り薄れないし、権利意識の高まりから、時の経過が権利を消滅させるというその期間が、20年というのは短すぎるように思われる。

 また、死刑事件の公訴時効も25年に延長された今、不法行為による損害賠償請求が、何があっても20年で消滅する、というのはいくらなんでも短すぎるというべきである。

 そこで、刑罰の時効期間の長期化と同様、除斥期間についても、現在の民法724条の20年の期間を、たとえば50年等に延長する法改正をすべきであると考える。


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