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桜宮高校体育科、「入試は中止だが普通科の別枠で募集」決定、教育委員会は政治家ではなく、生徒のことを考えた措置を行え。 [桜宮高校事件]

(1) 1月21日、大阪教育委員会は、橋下市長の意を受けて、桜宮高校体育科の入試を中止し、その代わり、同じ人数分、普通科の定員を増やし、入試科目や募集区域は体育科と同じにする、などという措置を決定した。

 この決定は教育委員5名のうち、4名の賛成で決議されたが、残る1名、教育委員長の長谷川恵一氏はこの案に対し、「看板を付け替えただけではないか」、と言って強く反対したが、多数決に押し切られた。

 橋下市長は、この決定を、現状ではベストの案だとして高く評価したが、教育委員会の決定は、まさに橋下市長に迎合しただけの、在校生や受験生のことを全く考えない、不当なものだと考える。

(2) そもそも橋下市長は、「桜宮高校体育科がどう変わるのか」、受験生に示せないままで入試を行うのは、その方が無責任極まりないと主張していた。しかし、今回の「体育科」から「普通科」への看板の付け替えで、一体、何が変わるのか、全く明らかでない。

 それどころか、募集はあくまで普通科なのだから、3年間、体育科と同様の教育が受けられるのかすら、はっきりしないのである。今回、「普通科だが、スポーツに特色あるカリキュラムを組む」と発表されているだけで、今年の受験生は、「桜宮高校体育科がどう変わるか」が分からないどころか、自分の高校3年間、体育科としての教育が受けられるのか、本当は何科の教育が行われるのか、ということすら分からない中で、自らのかけがえのない「高校時代の3年間」を、桜宮高校新普通科に委ねなければならないのである。

 その、受験生の不安を取り除くには、教育委員会として、「普通科として募集はするが、3年間、体育科と全く同じ授業を行う」などと表明してあげるべきだが、いくら何でもそんなことを言えば、体育科の入試を中止した意味を自己否定することになるから、これ以上、そのことを明確に表明するのは無理であろう。

 結局、教育委員会を信頼してくれ、という「腹芸」を行うことになろうが、こんな教育委員会の「腹芸」を信頼して人生を賭けた受験しなければならない受験生の立場の不安さは、橋下市長の言う「体育科がどう変わるか分からない不安さ」の比ではない。今回の決定は、受験生に対して極めて無責任なものであり、それだけでも決して許されないものである。

(3) また、今回の教育委員会の「体育科の入試中止」の措置は、在校生の心のケアとして、最悪のものとなっていることに、橋下市長も教育委員会は思いを致すべきである。

 今回の件で、仲間が自殺したことで、在校生のショックは非常に大きなものがあったであろう。橋下市長や教育委員会はその心のケアを第一に考えるべきところ、そんなことはお構いなしに、「教師、親、生徒までが暴力を容認している」「この体制を壊すには桜宮高校の廃校や体育科の廃止も検討すべきだ」などと公言しているが、これは、在校生の高校生活の全否定ではないか。橋下市長は、「君たちはこれまで、間違った、許されない高校生活を送ってきた。新入生にはそんなことはさせない。」と言っているのである。

 今回の、「体育科の入試中止」で、体育科の全否定は完成したというべきだろう。新年度、1年生は、新生「普通科」の看板を掲げた生徒だが、2、3年生は全否定されたままの、存在を許されなくなった「体育科生」なのである。

(4) そして、最も彼らを守ってあげられるのは、現在の桜宮高校の教員であろう。行き過ぎた暴力を容認していた者が何人かいることは明らかで、その点は抜本的に改善されなければならないのは当然として、それでも生徒から絶大な信頼を得ている人がほとんどのようだから、生徒の心のケアという意味では最適の人材のはずであるが、橋下市長や教育委員会は、彼らをすべて桜宮高校から放逐する、というのである。

 次年度、新しく来た教師は、生徒にとっては、心から慕っていた「領主」を追放した「侵略者」だと感じられないだろうか。

(5) そもそも、今回のバスケット部の顧問教師なども、言うまでもなく、単なる粗暴な人間ではなく、教育熱心な余り、体罰が行き過ぎた、というものである。これだけ大きな問題になって、今後は一切の体罰を許さない、ということを徹底すれば、少なくとも向こう何年かは、同様の事件が再発する可能性はゼロに近いことは明らかであろうhttp://kentaro-0013.blog.so-net.ne.jp/2013-01-16

 そして、これから時間をかけて、根本的に体育科や運動部や、また体罰と指導のあり方を議論して、変えていけばよい。

 そういう問題であるにも拘わらず、体育科の入試を中止して、受験生を不安に陥れ、本来、徹底的な心のケアが必要な在校生まで攻撃して全否定し、彼らが心から慕っているであろう教員をすべて追放する、などというのは、橋下市長の頭の中だけでは理論的に完結していても、社会としては決して許されない措置であると考える。

 教育委員会は、橋下市長の権勢を恐れて、その意向に逆らわないのではなく、今こそ、真に受験生や在校生のことを考えた、教育的措置を行うべきである。


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