野田首相の原発再稼働宣言、「国民の生活を守るため」というなら夏期限定でないと説明がつかない。

（１）　６月８日、野田首相が大飯原発の再稼働を宣言した。首相は、「国民の生活を守るため」ということを再稼働の理由としているが、それならば、現在、日本中の原発が止まっているのに国民の生活に何らの支障もないのであるから、真夏の電力不足の時期に限定して稼働させるべきだ、という批判に耐えられないのは明らかである。

（２）　野田首相はまた、今後、原油の輸入が途絶えた時などのためにも、原発は必要であるとし、この面においても「国民の生活を守るため」である、などとしている。

　しかし、原油の輸入が途絶えたら、ガソリンや化学製品一般の供給に支障を来すもので、原発で国民の生活を守れるものでない。真夏の電力不足時以外は、原発は国民の生活を守るものではないのである。

（３）　結局、真夏以外の原発の稼働は、福井県知事の、「真夏だけのいいとこ取り」なら一切、稼働は許さないという主張に対する配慮だけのものであろう。あるいは、「電力会社の生活を守るためだ」という橋下大阪市長の言も、説得力を持つ。

（４）　このような姑息な誤魔化しが必要なのは、すべて、原発の安全性について国民が納得できるものを提示できないからである。原発が安全とは言い切れないからである。

　安全とは言い切れない原発、ひとたび事故が起こると何十万人もの人々のふるさとを消滅させてしまうような危険な原発を、危険なままに再稼働することを、どんなに「国民の生活を守るため」などという理由を付けても、国民の理解も納得も得られないことは明らかである。

（５）　緊急避難的に、この夏の電力不足を乗り切るために、一夏だけ原発を稼働する、ということでも、正当性に疑問がつく。いわんや、安全性の保証のないまま、少なくとも向こう何年も原発を稼働させ続ける、などというのが不当なことは明らかである。

　政府は、原発の安全性について徹底的に検討するとともに、来年以降の夏に向けて、新たな火力発電所、揚水発電所の建設等、真夏でも原発を稼働させなくてもよい態勢の構築に向けて、全力を尽くすべきである。

コメント 2

　大飯原発の再稼動に向けた流れが勢いを増しています。

　私は、諸般の事情から、安全性がしっかり確認されて、地元の人達の同意が得られるなら、再稼動も止むを得ないのかも？と思います。
　でも、その一方で、本当に安全性は確保されているのか？正直不安に思っております。

　なぜかというと、民主党政権にダメージを与えたいと思う者達が、謀略で、再稼動された大飯原発で事故が起こるように、仕向ける恐れもゼロではないと思うからです。（そうなれば、自民党の願い通りに、解散総選挙になるでしょうから。）

　安全性がしっかり確認されないままの再開は、とても不安です。関係者の方々には、慎重な判断を、是非ともお願いしたいと思います。


追伸　　私は、自民党は、基本的に原発再開をやりたい党だと思っています。（もしかしたら、審議拒否を人質のようにして、民主党政権に再開を要求したかも？とも疑っております。）
　なので、もし、大飯原発が再稼動後に事故ということになったら、自民党も、一時的には困るかもしれません。
　でも、政権をとってしまえば、どうにでもしてしまう党だということは、郵政選挙の時の、サラリーマン増税の一件でも明らかなので、自民党に政権が戻ってしまった場合には、長期的にはダメージはないだろうとも思います。


追伸２　ところで、大阪氏の橋下市長ですが、いつか自民党に呑み込まれるのでは？と心配していたのですが…。
　なんだか嫌な予感が当たってしまったようで、気になります。
by 通りすがりです (2012-06-09 08:18) 

　通りすがりですさん、コメント、ありがとうございました。

　私も、直ちに、原発をゼロにするということは非現実的であり、再稼働後、徐々に廃止していくしか方法はないのだろうと思っています。

　しかし、政府がこのタイミングで、つまり、各種の安全施策をわざわざ決めたのに、その完全な実施がなされない中で、計画停電の回避を理由に再稼働を強行し、そういう理由なのに秋以降も稼働を続ける、というのは、どう考えてもおかしいと思います。

　自民党は、この問題はどういう結論を出しても各方面から批判されるので、また、党内もまとまっていないことから、高見の見物で行こうと思っているのでしょう。

　橋下大阪市長ですが、周到な計算のもと、したたかに、現実的解決をはかったということでしょう。彼が政権を獲っても、最後は無茶はしない、だから安心して政権を任せてくれ、というサインを、絶好のタイミングで全国民に送れたということでしょう。京都、滋賀の知事とも根回しをして絵を描いた、すごい策士も付いているぞ、ということなのでしょう。
by ｋｅｎｔａｒｏ (2012-06-09 10:56)