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福知山線事故、歴代社長の起訴は不当だ。 [刑事裁判問題]

(1) JR福知山線事故で、検察審査会の起訴意見を受けて、4月23日、JR西日本の歴代3社長が業務上過失致死罪で起訴された。

 このブログでは、一貫して強制起訴制度を批判しているが、それはともかく、今回の起訴は不当である。

(2) 起訴状の概要は以下のとおりである。

 JRでは東西線の開通にあたり、平成8年12月に、本件の線路のカーブを600メートルから304メートルにする線形変更工事を実施した。その際に制限時速を95キロから70キロに変更したから、周辺の120キロとの差が50キロに広がった。また、ダイヤ改正により、快速列車の本数が1日34本から94本に増加したためこれまで以上に運転士には定刻運転の要請が強まり、脱線転覆する危険性が差し迫っていた。

 また、同様のカーブで速度超過による脱線事故が函館線であったことが報告されていた。そうである以上、ダイヤ改正に際して自動列車停止装置(ATS)を整備すべきであった、というものである。

(3) しかし、カーブがきつくて事故が起こりやすい路線くらい、日本中にいくらでもあろう。カーブに一定の速度を超えて進入すれば脱線の危険が高まるのは当然である。函館線で同様のカーブで事故が起こったからといって、「制限速度遵守の通達」を出せばいい問題であって、直ちに、自動列車停止装置を整備すべきということにはならないはずである。

 そもそも、カーブに制限速度を超えた危険速度で入ってくる運転士がいることは極めて想定外の事実である。あるいはバスなど、運転士により常に事故が起こりかねない速度を出す危険に直面しているが、その危険を排除するシステムは特にないが放置されている。

 規則を無視するような運転士の存在や、その他、どの程度の危険を想定し、どのような基準で自動列車停止装置を整備すべきかは、一概に決めることはできないもので、今回の事故の前に整備するべきだった、などとはおよそ言えないはずである。

(4) あるいは、同じようなカーブがあるのに自動列車停止装置のない路線を持つ鉄道会社、完全な事故防止策を取りようのないバス会社の社長はいつ死亡事故が起こって刑事責任を問われるかもしれない状態を放置しているということになる。また、国交省とすれば、同様の箇所の有無を直ちに調査して、自動列車停止装置を付けない限り、列車の運行を禁止すべきだ、ということになるが、そうでない状態が容認されていることは明らかだろう。

(5) 結局、本件の状況において、本件事故の箇所に自動列車停止装置を設置すべきだったのにその義務を怠った、というのはいくら何でも論理の飛躍であって無理がある。また、歴代社長3人とも起訴し、3人とも義務を怠ったというのは、いくらなんでもアバウト過ぎるものであり、このことにも本件の起訴が被告人の過失を正しく評価していないことを示す結果にもなっているように思われる。

 本件の起訴は不当である。


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