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JR脱線事故で、検察審査会による、歴代3社長の「起訴相当」意見を批判する。 [刑事裁判問題]

(1) 兵庫県尼崎市で平成17年4月に、JRの脱線で乗客106名が死亡した事故で、神戸第一検察審査会は、業務上過失致死傷罪で告訴され、神戸地検が不起訴としたJR西日本の井出正敬元社長ら歴代3社長について、「危険性が格段に高まった現場カーブへのATS・自動列車停止装置の整備を指示しなかった」として、「起訴相当」決議を行ったが、不当である。

(2) ATSを、どのような基準でどのような場所に、いつ付けなければならないかについて、明確なルールがあるわけではなく、現在でも全国に、危険な場所に未設置のところは多数存在するものである。

 山崎前社長が起訴された時に当ブログでも指摘したがhttp://kentaro-0013.blog.so-net.ne.jp/2009-07-08、本件事故は、急カーブで制限時速が70キロに規制されているところを、46キロもオーバーした、運転士の異常な運転により生じたものであり、そのようなものまでカバーしなければならないとすれば、全国のすべての鉄道について、ATSの設置が終わるまで運行できないことになり、極めて非現実的である。そうしない間に事故が起こった場合、各鉄道会社の社長に刑事責任が問われることになってしまうが、それならば事前にそう、警告すべきである。

(3) しかも、平成21年に検察審査会法が改正され、2度、起訴相当意見が出た場合は、起訴が強制されるシステムになっている。そのことについての批判はすでに当ブログで行っているが、http://kentaro-0013.blog.so-net.ne.jp/2009-05-31検察審査会の意見は極めて重い。単なる市民の声ではなく、人を刑事被告人の身にしてしまう権力を持っていることを十分認識し、慎重にも慎重な判断が求められるというべきである。

(4) 本来、起こるはずのないような事故にまで、多額の費用をかけて防止する、というのは不相当である。どこまでが不相当と考えるかは、裁量の余地がある。結果的にその裁量が誤っていた場合、社会的責任を問われたり、会社として賠償責任が問われるのは当然だとしても、刑事責任を問うのは、通常の人間としては、決してあってはならないレベルで判断が間違っていた場合に限られるべきである。

(5) 神戸第一検察審査会は、刑事責任を問うべき過失と、社会的責任を負うべき過失の区別ができていないというべきである。今回の「起訴相当」意見は不当である。


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